見るたび増える一つ目の怪
どんな伝承か
仙北の南部境、仙厳峠のふもとに生保内という宿場があり、旅人は旅籠の女に生保内節を聞かされたものだった。南部藩士松沢喜内は久保田からの帰りにここへ泊まった。用向きが思わしくなく気は晴れない。行燈を消して横になっても寝つけずにいると、足もとに目がひとつ見えた。その目を見つめると、そこからもう一つ目が生まれる。見るたび新しい目が出て、数は百を超えた。喜内は恐ろしくなって布団をかぶった。ところが翌日登城すると用向きは首尾よく片づいており、以後も旅籠で目に出会った交渉はうまく運んだ。目が出るのは縁起がよいという語呂合わせか、と喜内は呟いたそうである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承