温泉宿で石鹸を菓子と噛んだ母
どんな伝承か
昭和一〇年ごろ、秋田県山本郡藤琴村の農家の母さんたちが、連れ立って温泉へ出かけた。旅館の部屋に通されて着替えていると、女中が紙で包んだ石鹸を持ってきて畳の上に置いた。それを見た一人がいきなり手を伸ばし、包み紙を歯でむしり取ってかじりついた。口に入れてはじめて石鹸と気づき、窓辺へ走ってペッペッと吐き出したという。あとで何のつもりだったのかと聞かれると、旅館に泊まると紙包みの菓子が出るものだと映画で覚えており、それだと思い込んだのだと答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考・1990年代初期(平成初期))
松谷みよ子『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』を小話単位で全550話収録。心霊写真など写真の怪と、文明開化期の怪異にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明377話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。