熊谷家傳記と坂部の旧家
どんな伝承か
信州の最南端、天竜川右岸の三河に接した坂部という小さな村に、熊谷という旧家のやや衰えかけているのがあった。二百年足らず前のその家の主人に学問の衆に秀でた者があり、自ら父祖歴代の手記を編輯したと称して数巻の大冊にまとめたのが『熊谷家伝記』である。久しく名を伝えた珍書で、前年これを謄写版にした篤志家があり、最近は活版にもなった。二百年以前のこの地域の口碑類を年代順に排列したもののようで、熊谷一家の盛衰のみならず、この山間一帯の土豪地侍の生活が窺い知られるのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。