三河天竺村に漂着した崑崙人
どんな伝承か
桓武大帝の延暦十何年かに、若い崑崙人をただ一人乗せた船が、三河の海辺に漂着したという故跡は、今の矢矧の古川の右岸にある天竹という村であろうということだ。この青年もまた還らなかった人である。常に悲しい声で何か歌っていたと、記録にも見えている。耳に環をはめたこの黒い男の血は遂に紛れてしまったが、我々が木綿の種を知ったのはこの時が最初で、しかも後代に及んで幡豆の海辺の低地は、見渡す限り綿畠の白い波であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。