佐文長者とおなべ狸
どんな伝承か
昔、佐文に長者の家があった。あまり大きいので村人は「大長者」と呼び、今もその屋敷跡を長者屋敷と呼んでいる。いつのころからか、屋敷の池のほとりの石橋の辺りに、おなべという名のおとなしい古狸が住みついた。長者は毎年お伊勢参りに行っていたが、ある年、出かけようとするとおなべが現れ、小さな箱を出して、これをお伊勢さんに寄進してほしい、どんなことがあっても蓋を開けて中を見てはならぬと念を押した。旦那は道中でつい約束を忘れて中を見てしまい、かんざし・こうがい・玉・一文銭が入っていた。箱をもとのようにして寄進し佐文へ帰ると、おなべがすぐに現れ、見たな、もうこの屋敷もこれまでじゃと言って姿を隠した。それからまもなく、長者の家は石が坂道を転がるように傾いたという。
原典より
<柳田——「長者屋敷」>昔、佐文に長者の家があった。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第12巻』所収の「文化叙事伝説」全139話(香川・徳島・愛媛・高知=四国)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。