弥九郎の犬
どんな伝承か
今から三百年ほど前、坂本に弥九郎という猟師がいた。大坂の戦に出て働きのあった鉄砲の名人である。新宮からの帰り道、作の小松で骨を喉に立てた狼に出会い、口へ手を入れて骨を抜いてやった。狼が送って来たので、礼の代わりに子を一匹くれと言って別れると、半年ほど後の朝、戸口に狼の子がいた。マンと名づけて育てると猪も鹿も一撃で仕留める名犬となり、新宮の殿様の巻狩では御座所へ迫った手負い猪の喉笛を噛み切って褒美を受けた。ある日、叔母が「狼は生き物を千匹殺すと飼主に向かう」と話すのを聞いたマンは、その夜三度長吼し、翌朝には姿を消して戻らなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第9巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全100話(奈良・大阪・和歌山・三重=近畿南部/紀伊)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。