問答で勝ち取った御神体と伊勢ころがし
どんな伝承か
伊勢参りの代参に出た上州の者が、神社の問答を受ける番に当たった。問答は神社が奉納金を取るための仕掛けで、必ず神社が勝つものだった。上州方は千両箱二つ、相手は御神体を賭けて誓約を交わしたが、身ぶり手まねの問答で天文の題が出て、心得のある者が勝ってしまった。神社側は腕ずくで取り返そうと追手を出した。一行は橋のない渡良瀬川の渡しを避け、向こうの袈裟丸山を越え八木原を通って帰ったが、地元近くで気がゆるんだのか御神体を奪われかけた。河原の渕で斬られた者は御神体を抱いたまま川へ飛び込んだ。その場所を伊勢ころがしと呼び、御神体は塩原の神明の森に祭られたという。森は上野十二社の一つで当時は立派だったが、今は畑になっている。別の話者は、勝ったのは松島小平太信清という人の先祖で、持ち帰った御神体は天照皇大神宮の曲玉・剣・鏡、伊勢ころがしは取り返しに来た者ともみ合って転んだ所だと語り、御神体はその後盗まれたという。
原典より
それが伊勢ころがしという場所で、お伊勢さん抱いたまま飛びこんだから、塩原に神明の森ってあった。—— 大間々町の民俗――伝説・怪異(群馬県民俗調査報告書 第19集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大間々町の民俗――伝説・怪異(群馬県民俗調査報告書 第19集・群馬県民俗調査報告書)
『大間々町の民俗――伝説・怪異』は、群馬県民俗調査報告書第十九集『大間々町の民俗』のうち、口頭伝承の部である。大間々町の神梅・桐原・塩原・小平などで聞き取った、赤堀道玄の娘や伊勢ころがし、腰掛石、念仏石などの伝説、スズメとツバメや猿婿、蛙と猿の餅競争などの昔話、狐の嫁入り・むじな・河童・人魂・山犬・あずきとぎの怪異を収める。伝説・昔話・怪異・命名・諺と方言の五つに分け、冒頭に上野勇の所見を置き、多くの条の末に採集地か話者の名を添える。