門を出て東へ去った侍姿
どんな伝承か
綾織村の字二日町に、屋号をそのまま二日町と呼ぶ家があった。今から五十年ほど前に瓦解してしまった家である。まだ続いていた頃、雨のしとしと降る日に、その門から羽織袴の立派な侍が現れた。蛇の目の傘をさし、高足駄を履いて、東の方角へ向かって歩き去ったという。村人は、あれはあの家のザシキワラシだと言いはやした。家の後の代は今では遠野町に移り住み、高橋の姓を名乗っているはずだと語り伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。