目籠を立てない厄神の宿の家
どんな伝承か
茨城県大子町では、二月と四月の八日には刃物を使ってはならないとされた。この日、上野宮宮本の紙屋と呼ばれる緑川近一氏の家だけは、厄神に宿を貸す家だとして、厄除けの目籠(メカイ)もニンニク豆腐も立てず、家の外に置いてある籠の類はすべて家の中へしまい込んだという。特別な供え物も、迎えや送りの作法もなく、宿という名からは遠いが、こうしたやり方が厄神の宿という祀り方の始まりではないかとも考えられている。
原典より
二月と四月の八日には刃物を使ってはいけない。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。