妖怪との取引を破って失った家
どんな伝承か
高橋敏弘が山形の妖怪住宅を歩いて調べた報告の一節。山形市に、妖怪と取引をした男がいたという。大金持ちにしてもらう代わりに自宅へ妖怪を住まわせてよいと約束したところ、その後の男は大きく成功した。ところが男は約束を破り、妖怪を追い出しにかかる。怒った妖怪は与えた幸運を取り上げてしまい、男は元の貧乏に戻った。家までも妖怪のものになったのは言うまでもないと結ばれている。高橋は同じ報告の冒頭で、山形では幽霊と妖怪が取り違えられたまま噂だけが広まりやすいと注意している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考-妖怪住宅の実体(西郊民俗・1991年12月)
本稿は1991年12月発行の『西郊民俗』に掲載された「怪異雑考-妖怪住宅の実体」で、山形県山形市を舞台とした妖怪住宅に関する4つの民俗怪異譚を記録している。幽霊と妖怪の混同事例、妖怪との契約と報い、妖怪による変身現象、そして妖怪退散の知恵など、多面的な妖怪住宅の実態を描き出す。特に興味深いのは、妖怪と人間の経済的相互作用や、家という物質的空間をめぐる妖怪の領分問題である。