大正十年七月の夕方の話
どんな伝承か
滋賀県高島郡今津町の話。大正十年七月の夕方のことである。郷庭野で夜間演習の時、斥候長として民家附近を偵察していると、一軒の農家の軒下で娘が行水をしていた。不意の闖入に驚いた娘は大声でオカッチャーンと母を呼んだ。母は蛇の目傘を広げて渡し、しゃがんだ娘は裸のまま盥の縁へ傘の柄を持って、兵隊のいる方へ回した。こちらは目の毒、娘さんには気の毒と、諦めて実敵の捜査に方向を変えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。