死ぬ日を告げた禅源寺の住職
どんな伝承か
村の禅源寺の住職、総崎は、自分は七十六年の寿命を授かったが人の命乞いをして十年縮めたので、六十六歳の何月何日何時に死ぬと決まっている、と日頃から村人に語っていた。誰も本気にしなかったが、その日の一週間前になると、各地に散った弟子たちへ危篤の電報を打つ。駆けつけた弟子が見れば、住職は水を汲み薪を割って元気に働いており、苦情を言われても、命はあと三日だから危篤なのだと涼しい顔をしている。当日は朝から掃除と馳走の支度をさせ、寺総代や村役員を招いて礼を述べ、別れの挨拶をした。読経が終わり最後の鉦を鳴らすと深く首を垂れ、そのまま冷たくなっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。