56:生後二十日目に歯が生え酒を飲む赤ん坊
どんな伝承か
明治二十六年、阿波国名西郡浦庄村大字下浦の百六十番屋敷に住む雑業富田岩吉三十八歳の情婦、西田しま二十四歳が、六月三十日に男児を産んだ。この赤ん坊は珍しい異常児で、生後わずか二十日ほどでもう下の前歯が生え、三十日ばかり過ぎる頃には仰向けに寝かせておくと独りで寝返りをうって俯せになるほど自由に体を動かした。手に物を握らせると三歳くらいの子と同じような力を出し、麦飯や甘藷を与えると独りで上手に食べた。薬は嫌って飲まないのに、試しに酒を飲ませるとチュウチュウと音を立てて大喜びで飲むので、人々はその怪童ぶりと成長後を心配したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方編著・日本怪奇集成・昭和初期(推定昭和2-3年))
明治・大正・昭和の怪奇譚(日本怪奇集成)/生首と幽霊の怪/狐狸のいたずら/怪盗と世相の怪異/各時代の不思議な事件