本を貸さぬ鍋屋と未完の三河志
どんな伝承か
柳田国男は三河を歩き、蔵書家たちのその後を書きとめている。西尾には、何と言っても本を貸さないので知られた鍋屋という家があった。同じ幡豆郡の寺津には逆に貸しすぎて多くを失った渡邊政香がいて、三河志という大著を未完のまま遺している。その三河志は後に鍋屋の手へ渡り、もう見られまいと思っていたところ、西尾の小学校に写本二部と一緒に置かれていたという。柳田は、著者は死後こそ一人でも多くの学者に読ませ、必要なら補訂させたかったろうにと書き、この辺りの善人たちは古書がなぜ貴いかを解していないと嘆いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。