痛いと叫んだ尽恵寺の盗まれた仏
どんな伝承か
『日本霊異記』中巻の一話である。和泉国日根郡に住む盗人がいて、寺の縁の飾りを盗んでは帯にこしらえて売っていた。聖武天皇の御世、その郡の尽恵寺の仏像が盗まれた。ある日、寺の北の道を馬で通る人が、痛いかな痛いかなと叫び哭く声を聞いた。近づくと声はやみ、遠ざかるとまた聞こえる。不審に思って引き返し、人をやって探らせると、盗人が銅の仏像を仰向けにして手足を剔り欠いているところだった。捕らえて問うと尽恵寺の像だと答えた。使いを出して確かめると、果たして盗まれた像であった。僧たちは集まって破れた仏を抱き、嘆き悲しんだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。