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蚊帳の上から打ちすえられた彌助一家

所在地千葉県香取市
年代大正四年七月一日頃
登場彌助、被害者(家長)
出典奇談全集 現代篇

どんな伝承か

寺島方が狙われたのと同じころ、彌助の家では、夫婦と男の子の三人が一つの蚊帳で寝ていた。そこへ忍び込んだ賊は、手にした棒のようなもので蚊帳の上から三人を続けざまに打ちすえた。三人は打ちのめされて逃げることもできず、彌助はかなりの裂傷を負い、女房や男の子も傷ついた。意識が遠のきかけたころ、どうしたはずみか雨戸が押し倒されて外へ転げ落ちる者があり、家の者はすぐに雨戸をはめ直してぴしゃりと締め切った。親子三人は、そうしてようやく傷の手当てにかかったという。雨戸を締め切って親子三人が傷の手当てをしていると、裏口の雨戸をめりめりとはがして、また何者かが押し入ってきた。目的を遂げるまでは帰らないつもりらしい。三人が震えながら土間の方をうかがうと、黒い筒袖の外套を着て頭巾で顔を包んだ、背丈五尺二寸ほどの、噂どおりの賊が白刃を逆手に光らせていた。金を出せと言われ、震えながら銭を入れる箱からありったけを差し出すと、五十銭銀貨や一円札、二円札の交じった十円ほどの金を、賊は何も言わずに受け取って立ち去った。家では夜が明けるのを待ちかねて近くの駐在所へ届け出た。七月一日のことである。

原典より

三人の着は打ち縮められて逃げることもできなかった。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)

『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。

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