音五郎が松材を二つ割りして刳り抜き鉄輪を嵌め木砲二門を完成
どんな伝承か
木砲の材料は周囲四尺ばかり、長さ一間ほどの松がよいとされ、一行は夜の松林に入って手探りで木を選んだが、月が隠れて真暗になり翌晩に持ち越された。やがてその月の二十三日、諏訪神社の森から伐り出した松で二門の木砲ができあがる。昼は竹藪に隠し、夜は佐治兵衛の家の土間へ運び入れ、経験のある音五郎が二つに割って中を刳り、合わせて鉄輪を数多く嵌めたものであった。火薬は猟師の伊藤兵右衛門が鑑札を借りて戸塚へ買いに行き、五合袋四袋を持ち帰った。二十五日夜、一行は平塚町の「うるこや」で訣別の酒宴を開き、翌日真土の今里の佐五左衛門宅へ引き上げた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集・大正~昭和初期(推定))
本書『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎による幕末から昭和初期にかけての日本各地の怪談・奇談を集成した作品である。明治維新期の松木事件から関東の連続殺人鬼事件まで、実地取材に基づく歴史的事件の記録と、民間に伝わる幽霊譚・怪異現象が混在している。特徴は、単なる怪談の創作ではなく、実在の地名・人物・事件を背景に、社会的矛盾や人間の怨恨が生み出す超自然現象を描く点にある。