腹に黒い影の写る叔父の写真
どんな伝承か
長野県南安曇郡の穂高に住む人が、小学校一年生だった昭和十九年の夏ごろの話である。叔父の戦死の報せが届き、遺骨が家に帰ってきた。続いて戦友からの手紙が来て、叔父は橋の上で腹に焼夷弾を受けて亡くなったと記されていた。家じゅうが息をのんだのは、その少し前に叔父自身が送ってきた写真のためである。銃を片手にビルマの密林を背にして笑って立つ姿の、ちょうど腹のあたりが、破れたように黒い影で覆われていたのだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。