これは私が叔母からきいた話です
どんな伝承か
叔母から聞いた話。叔母は明治十八年に芸西村の和食へ嫁に行き、難しい姑に仕えて夜遅くまで足袋を縫っていた。和食は浜に近く、夜が更けると波の音が耳について寂しかった。そのうちエッサ、エッサと船を漕ぐ声が聞こえてくる。夜更けに船でも通るのかと姑に尋ねると、「ありゃ毎晩の船幽霊がゆきよらあね」と少しも驚かなかった。長年住みついた人には、船幽霊は通るものと決まっていたのである。海で遭難した者の亡霊が、夜、船に乗って海を往来するのだという。行き合うと船は見えず、ただ後ろの方へ声だけがしてゆく。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。